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水の不思議

もっとも身近にあり、すべての生き物に必要な「水」

 

日本人にとって、「水」は非常に身近な存在であり、それは日本語の様々な表現にも見られる。

例えば、「水」は、その土地の風土・気候の象徴のようなものであり、広辞苑によれば、「水が合わない」とは、「その土地の風土・気候が自分に合わない」ことを指し、逆に「水に慣れる」とは、「新しい土地や環境になれる」ことを指す。

 

また、「水」は、汚れたものを清めてくれる存在であり、私たちは、多少もめ事があっても、最後は、「水に流」し、「とやかく言わず、すべてなかったこと」にしがちである。

 

さらに、「水」は、どこにでもたくさんあるものと考えられており、「湯水のように使う」とは、「金銭を惜しげもなくむやみに費やすことの形容」である。

 

水の性質は、自然界の他の物質と比べて、特異なものであり、かつ、その性質故に、私たちの生活環境において重要な役割を果たしている。

 

水はあらゆる物質と反応し、なんでも溶かします。

まさに究極の溶剤といえるでしょう。

 

水は見境なく、あらゆる物質に手を出します。

時にはさまざまな物質と手をつなぎ、ときには包み込み、ときには原子の間にわって入り無理やりその仲を引き裂こうとします。

 

容易に溶けないといわれる金でさえ、水は時間をかけて少しづつ溶かしてしまうほどなのです。海の水には自然界に存在するさまざまな物質が溶け込み、何千種類といわれる物質が含まれています。

 

水にこれだけの溶解能力がなければ、地球に生命が誕生することはなかったでしょう。

この性質は人間の生命活動と重要な関わりがあります。

 

たとえば血液には各種ホルモンをはじめとする多くのたんぱく質や、ミネラル、ブドウ糖、アミノ酸などが溶け込んでいます。これらの必要な栄養分がすみずみの細胞に送り届けられるのは、水にいろいろな物質を溶かす性質があるからです。

 

また、血液がからだじゅうにゆきわたるのは、水の表面張力が大きいため。

たとえば、コップの水にティッシュペーパーの切れ端を差し入れたら、水はみるみるうちに薄い紙に染み込み、水面よりも高いところまで登るはずです。

 

これは水の表面張力が発揮された毛管現象。

表面張力が大きいほど毛管現象は力を発揮します。

そのため血液が組織の末端にまで届き、生命活動が維持されるのです。

 

酒 と 水

 

水は化学式H2Oであり、大きさ1Å(オングストローム=10-10m)程度の、水素原子2個と酸素原子1個からなる分子であるが、酸素原子のほうが大きい。

 

原子が大きいということは、電子を多く持っていることにほかならず、この酸素原子のまわりには電子が光速に近い速さで回っているのだが、水素原子に束縛されない自由な電子が存在していて、隣の水分子の水素原子と「はかない関係」を持つようになる。

 

これを水素結合と化学の分野では呼ぶのだが、この水素結合によって水分子は数個の分子が集団で動くようになる。これをクラスター(ぶどうの房の意)と呼び、これが前述の酒のまろやかさと関係している。

 

さてアルコール分子はC2H5OHと表現される構造をしていて、水酸基(-OH)が分子の端にくっついている(C:炭素原子)。このアルコールの水酸基がむきだしに近い状態で酒に含まれていると、舌先にピリッとする刺激を与えると言われている。

 

従って、この水酸基に近い空間を単独の水分子で埋めた状態の酒がまろやかな舌ざわりを与えるようになる。酒では、この状態になるのに10年~20年かかる場合があり、“寝かす”という表現をし、年代物にはプレミアがつく。

 

通常クラスターを形成している水分子の塊は大き過ぎて、アルコール水酸基の周りに入り込めない。たかが水に外部からエネルギーを与えると水素結合が切れて単分子の水分子が増加する。この与えるエネルギーとしては、電場,磁場,遠赤外等様々あり、いずれもその効果が確認されている。

 

この状態の水を『活性水』または『機能水』と呼び、食品製造メーカーのみならず、医療分野で消毒用または薬剤の溶媒に活用し、農業分野で日持ちの良い野菜類の生産に活用し、畜産分野では家畜の飲み水として使用し、牛,馬等の病気予防に、また糞尿の悪臭防止に活用している。

 

酒造メーカーが、この機能水を活用して酒をつくり、まろやかな酒つくりを達成していることが報告されている。20年ものの酒も1年でつくれることになる訳だが、“たかが水”、この理論はあまり信用されなくて、活用しているメーカー,病院,農家も多くない。“たかが水、されど水”なのである。

 

植物はなぜ地中から水を吸えるのか?

 

植物は、地中から栄養分を水とともに吸収し、幹、茎、葉の隅々まで行き渡らせ生命活動を支えながら、最後は気孔から大気中に蒸散していく。草木は比熱容量の大きな水を多量に含む太陽熱で過熱されて枯れることがなく、また、蒸散に伴う気化熱により温度上昇も防いでいる。

 

植物中の水移動には表面張力という水の特異な性質が関係している。

液体の分子は互いに引き合っているが、液体の表面では分子は内向きの力を受ける一方、液体の内部では分子が周辺の分子から受ける力が均衡しているため、結果的に液体は表面積の小さな形つまり球になろうとする。

 

この力が表面張力である。表面張力は、分子間力が大きいほど大きい。例えば、水の表面張力が72.75×10-3N×m-1であるのに対してエタノールは22.39×10-3N×m-1で、3倍以上の値となっている。

 

表面張力の大きな液体は大きな球をつくるという性質につながるが、それだけでなく他の固体表面と接触する場合に固体分子と分子間力が大きければよく濡らし、その隙間にしみ込んでいく。水吸収力の大きな紙、タオル、おむつなどの材料を選ぶ時に重要となる。

 

一方、ビニールやテフロン加工した容器や撥水処理した衣類にはしみ込まず、水だけが球状に集まろうとする。さらに、表面張力の大きな液体は毛細管の固体表面をぬらす関係にあるので縦方向であれば上昇し、横方向であればどこまでも拡散して行こうとする性質をもつ。

 

このようにして表面張力により、植物は、土壌中の水に溶けた栄養分を細い根管から吸い上げ、さらに、導管と呼ばれる毛細管で高い茎の先や葉にまで吸い上げ、高い樹木として育つことができる。それは水の中に溶けた栄養分を毛細管を通じて運ぶプロセスであるとともに、酸素を吸収し、植物としての生命を維持するプロセスでもある。

 

動物の場合には、血管などの毛細管によって体の隅々まで血液、体液を通して、栄養分と酸素が運ばれていくことになる。

 

生き物はなぜ水を飲むのか?

 

生き物は、水無しでは生きていけない。人は、1日におよそ2.5リットルの水を摂取しており、体内の水分の1パーセントが失われただけでも、のどの渇きを覚えると言われている。

 

また、人の体の60パーセント以上は水であり、特に赤ん坊や若者は水分の割合が高く、皮膚だけでなく体全体の細胞の活動が活発であることを示している。

 

「水の滴るような」と言えば、「美男美女のつやつやとして色気のあるさま」を指すが、「水」は生命力の象徴と見られているのはそのためである。生き物が水無しでは生きていけないのは、水が生命の誕生や生命の活動そのものと深く関わっていることによると考えられる。

 

まず、生命の誕生については諸説があるが、地球上の生命が、原始地球上の海で誕生し、海の中で進化して、やがて陸に上がっていったことについては、あまり異論はない。

 

初めに海中に誕生したバクテリアなどの原始生物は、ブドウ糖を栄養源として使い、発酵により、エネルギー運搬体(ATP:アデノシン三リン酸)とアルコールを作っていたと考えられている。

 

 

一方、緑色植物は太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素(CO2)からブドウ糖と酸素をつくるシステムを造り上げた。これが光合成である。バクテリアも植物も動物も、こうして生産された酸素を使って、体内のブドウ糖などの有機化合物から、より多くのエネルギー運搬体(ATP)をつくるシステムを造りあげた。

 

これが呼吸である。この呼吸の後には、いわば「燃えかす」として二酸化炭素と水が残る。

 

水は、非常に安定した物質であり、ここから物質やエネルギーを取り出すことは非常に難しい。例えば、水から水素を取り出すには、エネルギーを加えて、電気分解をする必要がある。

しかし、緑色植物は、この「燃えかす」として残った水と二酸化炭素を、太陽エネルギーを利用して、ブドウ糖などの有機化合物と酸素に還元している。

 

このように、水の中で誕生した生命は、水と関係が深い「呼吸」と「光合成」というメカニズムを造り上げていったわけである。

 

また、水は、非常に多くのものを溶かすことができるという特性のため、生き物の体内では水に溶けた様々な物質を用いて、「代謝」と呼ばれる生体化学反応によって、生命活動に必要なエネルギーや各種の物質を作り出し、不用になった物質を分解している。

 

この「代謝」は、水という溶媒の中で行われているとともに、その生体化学反応の触媒として作用する酵素タンパク質もまた、水に囲まれた柔軟な立体構造を保っているためにその機能を発揮することができる。

 

一般には水に溶けないと言われているような物質ですら、若干は水に溶けてあらゆるところに運ばれていく。自然界にすむ動物や植物は、水溶性の無機化合物と、酵素を用い、水を媒体として有機化合物を合成し生命を維持しているのである。最近では、水を溶媒として有機化合物の合成をする研究も進んでいる(第4章の3参照)。

 

また、人は1日に最低2.5リットルの水を必要とするが、実際には、人が1日の活動を維持するためにはその約10倍の水が必要だと言われている。その差をどうしているかというと、体内でリサイクルされている。腎臓でろ過された水が、また体内を循環しているのである。

 

このように、海水の中で生まれた生命は、水と深い関わりを持って生命を維持しており、水無しでは生きられない存在となっている。

 

それだけに、良好な水質が確保されていることは、生き物にとって非常に重要なことである。

我が国の河川や湖沼は、かつてはかなり水質が悪化していたが、水質の法的規制や下水道の普及、水処理技術の発達などにより、その水質は次第に改善されてきた。